当施設の象徴である「格子」は、単なる装飾ではなく、防犯・採光・通風・目隠しという高度な機能を兼ね備えた建築エレメントです。奈良の町家で用いられる格子にはいくつかの明確な種類があり、職種や用途によって使い分けられていました。
ならまち格子の家で見られる代表的な格子とその機能美は以下の通りです。
- 仕舞格子(しまいごうし):昼間は光や風を通し、夜間や商売の休止時には格子戸を収納・固定して強固な雨戸のように閉め切ることができる可動式格子。
- 糸屋格子(いとやごうし):糸や布地を扱う繊維商などで好まれた格子。上部からの自然光を多く取り込み、商品の色合いを忠実に確認できるよう格子の隙間が広めに作られています。
- 親不知子不知(おやしらずこしらず)格子:太い親木と細い子木を交互に並べた複雑な組子構造。「外の通行人からは室内が一切見えないが、室内の住人からは外の様子が鮮明に見える」という優れた視線バウンダリー(境界制御)を実現しています。
また、室内に足を踏み入れたら絶対に見逃せないのが「箱階段(はこかいだん)」です。2階へ上がるための階段下すべてのデッドスペースを、引き出しや観音開きの収納箪笥として徹底活用した家具一体型階段であり、狭小な空間を隅々まで生かし切る機能美の極致と言えます。