アイコスが健康志向の愛煙家に選ばれる最大の論拠は、「タールフリー」あるいは「有害成分95%カット」というメーカーの訴求にあります。この仕組みを支えているのが、アイコスイルマ独自のスマートコア・インダクション・システムです。
タールとは、タバコ葉が約600度〜800度で燃焼する際に生じる不完全燃焼生成物(煤や多環芳香族炭化水素など、数百種の発がん性物質の総称)を指します。アイコスは火を用いず、タバコスティック内の金属誘電体を磁気で約300度〜350度前後にコントロールしながら加熱します。燃焼反応が起きないため、定義上の「タール」は原理的に発生しません。フィルターに付着する茶色い色素の主成分は、煙の煤ではなくグリセリンと水蒸気に溶け出したタバコ葉のエキスです。
しかし、ここには重大な生理学的落とし穴が存在します。「タールがないこと」と「ニコチンの無害化」はまったくの別問題です。
医療機関や薬理動態の研究データが示すアイコス吸引後の血中ニコチン濃度推移は、紙巻きタバコを吸った際のスパイク曲線とほぼ一致します。吸引開始からわずか2〜3分で血中濃度はピークに達し、血液脳関門を軽々と突破して脳内のニコチン受容体を刺激します。煙特有の喉への強い刺激(スロートキック)を抑えつつも、中枢神経系には紙巻きタバコとまったく同一の薬理的衝撃が加わっているのです。