年の瀬に飾られた鏡餅の「かがみまりも」は、いつも床の間でじっと動かずに座っています。しかし、その内面は穏やかではありません。仲間のお餅たちが容赦なく焼かれたり、雑煮に沈められたり、納豆に絡められたりして食べられていく様子を目の当たりにし、「いつか自分も同じ目に遭うのではないか」と強い恐怖と不満を抱いていました。
そしてある日、まりもは決断します。「もう我慢できない、逃げ出そう!」。鏡餅からむくむくと手足が生え、勢いよく走り出す場面は、見る者の意表を突くダイナミックな展開です。道行く人々や自然の中を駆け抜け、自由を手に入れたかのように見えたまりもですが、読者の予想をはるかに超えるクライマックスが待ち受けています。
逃げ回って安心したまりもは、猛烈な空腹に襲われます。食べるものが周囲に何もない中、彼が取った行動は、なんと「自分自身のお腹や手足をちぎって食べる」ことでした。自らの美味しさに感動しながら自分を食べ進め、最後は満足そうに丸くなってしまうという幕引きは、ナンセンス絵本としての極致であり、初読の親子に強烈な驚愕と笑いをもたらします。