古着屋のハンガーに並ぶヴィンテージのコートやトレンチジャケット。その襟裏を裏返すと、小さなボタン留めの帯がひっそりと収納されているのをご存じだろうか。これが衣類におけるチンストラップだ。もともとは寒冷地での作業時や雨風が強い海上で、襟をしっかりと立てて喉元を密閉し、体温低下を防ぐために考案された実用パーツである。
時代が下るにつれ、過酷な現場を支えるワークウェアに欠かせないディテールとして定着した。過酷な屋外環境に耐えうる頑丈な縫製、金属製のバックルやボタン留めの仕様は、過酷な労働に立ち向かう男たちのタフネスを象徴していた。そして現在、過剰な装飾を削ぎ落とした武骨なディテールはアパレル産業において再評価され、ストリートからハイブランドのコレクションまで、着こなしのアクセントとして鮮やかに復権を果たしている。