自由学園明日館は、1997年(平成9年)5月に国指定重要文化財の指定を受けました。しかし、明日館が日本の文化財保存の歴史において画期的なのは、指定を受けたことそのもの以上に、その保存手法にあります。
当時の文化庁や関係者の証言記録によると、文化財指定にあたっては「静態保存(紐を張って立ち入りを禁じ、眺めるだけの展示物にする)」か「動態保存(人々に開放し、現役の施設として活用し続ける)」かで大きな議論が交わされました。明日館が選んだのは、建物本来の役割である「人が集い、憩う場」として使い続ける動態保存の道でした。
中央棟の食堂に足を踏み入れると、ライトと遠藤新が共同でデザインした小ぶりな木製椅子が並び、見学者はそこに自由に腰掛けて談笑することができます。遠藤新がライトの帰国後に増築した「講堂」では、現在も音楽コンサートや公開講座が定期的に催され、大谷石のレリーフと木組みの梁が音響と調和します。傷みを恐れて人を遠ざけるのではなく、人の手で手入れされ、愛されることで命を吹き込まれ続ける名建築のあり方そのものが、訪れる者に深い感動を与えるのです。