道枝駿佑の映画キャリアを語る上で避けて通れない金字塔が、2022年公開の主演作『今夜、世界からこの恋が消えても』(三木孝浩監督)です。前向性健忘を患うヒロイン・日野真織(福本莉子)と、自らの境遇を隠しながら彼女を献身的に支える神谷透(道枝駿佑)。この切ない純愛物語は、日本国内で興行収入15.3億円を記録しただけでなく、海を越えた韓国で映画史に刻まれる特大の熱狂を生み出しました。
韓国市場における日本実写映画の動員数としては、1999年の『Love Letter』(岩井俊二監督)以来、実に20余年ぶりとなる観客動員110万人超えを達成。現地の若者層(特にMZ世代)を中心に「n次回鑑賞(リピート鑑賞)」が相次ぎ、現地の映画館には涙を流す観客の列が連日途絶えませんでした。韓国のSNSでは「ミチゲッタ(狂いそう)」と「シュンスケ」を掛け合わせた造語「ミチゲッタシュンスケ」がトレンド入りを果たし、2023年1月に彼が現地プロモーションで訪韓した際には、金浦空港および舞台挨拶会場に数千人のファンが殺到する異例のフィーバーを巻き起こしました。
この歴史的ヒットの背景には、韓国カルチャー特有の「清純派初恋ノスタルジー」に、道枝の持つ透明感と儚げなビジュアルが完璧に合致したことがあります。当時の韓国メディアは「90年代の岩井俊二ワールドを彷彿とさせる純粋な少年像を、現代に完璧に具現化した俳優」と最大級の賛辞を贈りました。
また、ネット上で現在も大きな関心を集めているのが、物語の転換点となる海辺のピクニックでのキスシーンの真相です。美しい夕景のなかで交わされるキスは、単なる胸キュン演出ではなく、透の抱える秘密と相手への無私の愛が凝縮された重要なドラマ的結節点でした。公開当時の特別番組やインタビューにおいて、三木監督は「道枝くんの純粋さと、神谷透としての覚悟が交差する瞬間を撮りたかった」と述懐。道枝自身も「ただ綺麗に見せるのではなく、透が真織の明日を想う切実な感情を第一に意識して現場に臨んだ」と語っています。ファンの間では当初、アイドルのラブシーンに対する動揺や懸念の声も上がったものの、完成した映像の圧倒的な美しさと物語上の必然性に触れ、公開後には「映画史に残る美しい名シーン」として絶賛の声へと一変しました。