かつて昭和から平成にかけて、日本の深夜カルチャーを象徴していたのがファミリーレストランの24時間営業でした。終電を逃したビジネスパーソンや学生がドリンクバーで語り合い、長距離トラックのドライバーが温かい食事をとる「深夜のオアシス」として機能していた光景は、ここ数年で一変しています。
公式発表資料および日本フードサービス協会の外食産業動向データを紐解くと、深夜営業縮小の引き金を引いたのは以下の3つの構造的要因です。
第1の要因は、深刻な人手不足と労務管理の厳格化です。労働基準法により22時から翌朝5時までは基本給の25%以上の深夜割増手当が義務付けられていますが、夜間帯のアルバイト・パートの有効求人倍率は高止まりを続けており、採用コストは跳ね上がりました。さらに企業側の「働き方改革」の推進によって、従業員に無理な夜勤シフトを強いるビジネスモデル自体が限界を迎えたのです。
第2の要因は、エネルギーコストの高騰と損益分岐点の上昇です。電気代やガス代、物流費の高騰は店舗運営費を直撃しました。深夜帯は客足が落ちるにもかかわらず、広い客席の照明や厨房の冷蔵・調理設備を稼働させ続けなければなりません。客数が採算ラインを割り込む店舗を夜通し開けておく合理性が完全に失われました。
第3の要因は、消費者の生活様式(ライフスタイル)の根本的な変化です。テレワークの浸透や二次会文化の縮小、家飲みの定着によって、繁華街やロードサイドを問わず深夜の外出人口が激減しました。「待っていても客が来ない時間帯」に店舗を開け続ける固定費を削り、需要が集中するランチやディナータイムに人員とリソースを集中させる戦略へのシフトが起きたのです。