「なぜ、郊外の書店にこれほど多くの人が集まるのか」――オープン当初に囁かれた疑問は、いまや称賛へと変わっています。函館蔦屋書店の最大の強みは、モノを売る店舗ではなく「過ごす時間」そのものを提供するコンセプト設計にあります。
代官山蔦屋書店で培われたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のノウハウを地方都市向けに大胆に再構築した空間には、大きな暖炉を囲むラウンジ、天井高を活かした開放的な書架、自然光が差し込む大きな窓が配置されています。訪れた利用者の手記やSNSのレビューを追うと、「用事がなくても気がつけば足が向いている」「函館の厳しい冬でも、暖炉の火を見ながら本を開くだけで心が落ち着く」といった声が数多く寄せられており、空間への愛着がリピートの原動力になっていることが分かります。
さらに、地域住民の日常的な動線と、函館を訪れる観光客の知的好奇心を満たす導線が見事に調和している点も見逃せません。函館ゆかりの文学や歴史、道南の食文化を深く掘り下げた独自のフェア展示が常設されており、一般的なガイドブックでは出会えないディープな街の魅力に触れられるハブとしても機能しています。