唇が乾くたびにリップクリームを往復させて擦り込む行為は、多くの人が無意識に陥る最大の落とし穴です。実際、美容皮膚科の外来では、保湿目的の使用が仇となるリップクリーム逆効果の事例が後を絶ちません。リップクリームを1日に10回以上、強い筆圧でゴシゴシと横方向に塗る行為は、薄い角層に対してサンドペーパーをかけているのと変わりません。
また、製品に含まれる成分自体が接触皮膚炎(かぶれ)を引き起こしているケースも多発しています。特に注意すべき要素を整理します。
リップクリームの基剤として多用される蜜蝋(ミツロウ)、ラノリン、合成香料、さらにはスッとする爽快感を与えるメントールやカンフルといった刺激成分は、敏感になっている粘膜境界部にとっては強いアレルゲンになり得ます。「塗れば塗るほど皮がむける」「塗った直後は潤うのに数十分後には前よりガサガサになる」という自覚症状がある場合、保湿不足ではなく、製品自体によるアレルギー性口唇炎を疑う必要があります。
さらに、紫外線カット成分(UV吸収剤)が入った日中用リップを夜間も使用し続けることで、デリケートな粘膜を休ませる時間が奪われ、慢性的な炎症に発展しているケースも散見されます。保湿アイテムを選ぶ際は、有効成分が過密に入った医薬部外品よりも、不純物を極限まで精製した純度の高い保湿剤を選択することが回復の近道です。