Web上の闘病記やSNSの手記、ピル血栓症体験談ブログまとめなどを横断的に検証すると、患者が違和感を覚えてから救急搬送・確定診断に至るまでのプロセスには驚くほど共通したパターンが存在します。
都内のIT企業に勤務する20代女性の手記には、日常の些細な変化から始まった悪夢のような数日間が生々しく記録されています。
「肌荒れと生理痛の改善のために低用量ピルを飲み始めてから、ちょうど2ヶ月目の朝でした。右足のふくらはぎに、寝違えたような、あるいは激しい運動のあとのような引きつる違和感を覚えたのです。『昨日ヒールで歩き回ったせいかな』と軽く考え、湿布を貼って出社しました。ところが夕方になると、ふくらはぎの激痛と片足のむくみが尋常ではなく、右足だけパンプスに入らないほどパンパンに腫れ上がっていました。歩くたびにふくらはぎの奥を万力で締め上げられるような激痛が走り、足をつくことすらできなくなったのです」(当事者の手記より)
この女性は翌日、近所の整形外科を受診しましたが、レントゲンで骨に異常がなかったため「重度の肉離れ」と診断されて帰宅。しかしその翌夜、突然の激しい胸の圧迫感と息苦しさに襲われ、自力で救急車を呼ぶことになりました。搬送先の総合病院で下された診断は、足の静脈にできた血栓が血流に乗って肺の血管を塞いだ「肺血栓塞栓症(肺塞栓症)」でした。集中治療室(ICU)で24時間の持続点滴治療を受け、一命を取り留めたといいます。
こうした記録から浮き彫りになるのは、発症時期と服用期間の経緯における明確な傾向です。日本産科婦人科学会の報告でも示されている通り、血栓症のリスクはピル服用開始後の1〜3ヶ月以内が突出して高く、半年を過ぎると徐々にリスクは低下・安定していきます。しかし、「飲み始めたばかりの薬のせいで命の危機に瀕している」と直感できる人はごく一部であり、多くの当事者が整形外科や接骨院を経由して診断が遅れているのが実情です。