「ハヤシライスに味噌や醤油を入れると、ただの牛丼やすき焼きになってしまわないか」と懸念する料理ビギナーは少なくありません。しかし、日本の洋食文化の発祥を振り返ると、銀座や浅草の老舗洋食店は西洋から渡来したドミグラスソースをご飯に合わせるため、隠し味として溜まり醤油や八丁味噌を秘密裏にブレンドしてきた歴史があります。
味噌、とりわけ長期間熟成された赤味噌(豆味噌)には、大豆タンパク質が分解されてできたアミノ酸ペプチドとメラノイジンが大量に含まれています。これがデミグラスベースの焦がし小麦粉の風味と完全に共鳴し、ルーに欠けている「発酵由来の重層的なコク」を瞬時に補填します。
注意すべきは使用量です。4皿分のルーに対して加える味噌は小さじ1杯、醤油なら小さじ1/2〜1杯で十分です。塩味を足すのではなく、香りとアミノ酸の底上げを狙う意識で投入することで、主食である白米との相性が劇的に跳ね上がります。