「死番虫に噛まれた」「シバンムシに刺されて激痛が走った」という声を耳にすることがありますが、昆虫学的に見てシバンムシ自身が人間を刺すことは絶対にありません。シバンムシの口器は乾物をかじるためのもので、人間の皮膚を貫通して吸血する構造にはなっておらず、毒針も持ち合わせていないからです。
それにもかかわらず被害報告が絶えない理由は、シバンムシを宿主として寄生する二次害虫「シバンムシアリガタバチ」の存在にあります。体長1.5〜2ミリほどのアリに酷似した黒褐色の微小なハチで、羽を持たない雌はシバンムシの幼虫に毒針を刺して麻痺させ、体内に卵を産み付けます。
シバンムシが大量発生すると、それをエサとするアリガタバチも爆発的に増殖します。このハチが畳や絨毯、布団の上を徘徊し、知らずに触れたり寝返りを打った人間の皮膚を尾部の毒針で刺すのです。刺された瞬間にはチクッとした鋭い痛みがあり、数時間から翌日以降に赤く硬いしこりや激しい痒みが生じます。この腫れと痒みは1〜2週間にわたって長引き、アレルギー反応によって大きく腫れ上がるケースも少なくありません。シバンムシの放置が厳禁とされる最大の理由は、このアリガタバチによる健康被害を招く点にあります。