七夕の夜、引き裂かれた織姫と彦星(こと座のベガとわし座のアルタイル)の間を流れる天の川に、無数の鳥たちが身を寄せ合って橋を架ける――。この壮大なイメージの原型は、中国古代の民間伝承である鵲の橋伝説中国にあります。
中国前漢時代の思想書『淮南子(えなんじ)』や後漢の『風俗通義』などの記述に端を発する七夕伝説由来によれば、天帝の怒りに触れて天の川の東西に隔てられた牽牛と織女を憐れんだ鳥「カササギ(鵲)」たちが、旧暦7月7日の夜になるとどこからともなく天へと昇り、互いの頭と尾、翼をびっしりと重ね合わせて一本の浮橋を作ると伝えられています。これが「鵲橋(じゃくきょう/かささぎのばし)」です。
では、なぜ鶴や白鳥、あるいは水鳥ではなく、カササギでなければならなかったのでしょうか。中国の民間伝承において、カササギは「喜鵲(きじゃく)」と呼ばれ、民家の軒先で鳴くと遠方から吉客が訪れる、あるいは慶事が舞い込む「吉祥のシンボル」として絶大な信仰を集めていました。加えて、カササギ鳥生態に着目すると、彼らはカラス科特有の強い社会性を持ち、繁殖期を過ぎるとしばしば集団で行動する習性があります。黒と白の鮮烈な羽毛のコントラスト、そして群れを成して飛翔する幾何学的な美しさが、古代の人々に「星の海を埋め尽くす奇跡の架け橋」を連想させたのです。