すべての始まりは、漫画家・杉しっぽの手によって描かれた読み切り作品『芋けんぴついてるよ』だ。小学館が発行する月刊少女漫画誌「Sho-Comi」に掲載されたこの短編は、一見すると典型的な学園ラブコメディの装いをとっていた。容姿端麗な男子高校生が、主人公の少女の髪に優しく手を伸ばす。胸の高鳴りが最高潮に達するその瞬間、男の子が口にした言葉が、まさに全読者の予想を裏切る一言だった。
「芋けんぴついてるよ」——そう言って男の子は、彼女の髪から引き抜いた芋けんぴを自らの口に放り込み、カリリと音を立てて噛み砕く。本来であれば桜の花びらやパンのくず、あるいはご飯粒が配置されるべき王道の少女漫画ロマンシズム。そこに硬質で油分を帯びた「芋けんぴ」を選んだ狂気が、作品を一気に伝説の域へと押し上げたのである。この1コマが持つシュールな破壊力は、瞬く間に読者の口コミで広がり、インターネットミームとしての第一歩を踏み出すこととなった。