「少し浮いているから」と端から爪で無理やりバリッと引き剥がしてしまう行為は、爪にとって最も破壊的なダメージを与えます。その危険性を理解するには、自爪の解剖学的な構造を知る必要があります。人間の爪(爪甲)は単一の硬い板ではなく、角質化したケラチンタンパク質が三層に重なり合って形成されています。表面から順に「背爪(トップ)」、柔軟性を持つ「中爪(ミドル)」、水分を保つ「腹爪(インナー)」という三層構造です。
粘着力の高いシールやシアノアクリレート系の強力接着剤(ネイルグルー)で密着しているチップを乾燥した状態で力任せに剥がすと、チップと一緒に一番強固であるはずの背爪の角質細胞まで引きちぎられてしまいます。オフした直後に爪の表面が粉を吹いたように白くなっていたり、ザラついて薄くなったりしているのは、まさに背爪が剥ぎ取られて中爪が剥き出しになったサインです。この角質剥離を繰り返すと、自爪はペラペラに薄くなり、日常生活のわずかな衝撃で割れたり、皮膚から爪が浮き上がる「爪甲剥離症」を招く危険性があります。
日本ネイリスト協会の指導指針でも強調されている通り、オフ作業における鉄則は「接着層の結合を物理的または化学的に弱めてから、滑らせるように外す」ことです。自爪を傷めない外し方を実践するためには、決して急がず、爪と接着剤の間に水分や油分、あるいは専用溶剤を行き渡らせる時間を惜しまない心構えが求められます。