死刑制度の本質を法社会学および犯罪心理学の視点から解読すると、そこには近代国家が成立させた「私刑(リンチ)の禁止と国家による復讐の代行」という構造が見えてきます。
未開社会における「目には目を」の復讐律を法治国家が引き受け、客観的なルールと法廷手続きによって処罰感情を鎮静化させる仕組みこそが近代刑法の起源です。日本社会において死刑への支持が根強い背景には、共同体の道徳的境界線を侵犯した者に対する強い制裁意識と、秩序回復への心理的欲求が深く根を下ろしています。
しかし、厳罰を科すことと遺族の心の救済が真に一致するかどうかは、心理学的に極めて複雑な問いです。確定者の死によって法的な幕引きがなされた後も、喪失感やトラウマが消えるわけではありません。市民一人ひとりが裁判員として極刑の選択を迫られる可能性がある現代において、感情論としての厳罰要求と、国家が命を奪うことの重みを天秤にかける理性的バウンダリー(境界線)の維持が、社会全体に問われています。