角打ちの発祥には諸説あるが、最も有力とされるのが福岡県北九州市の工業地帯だ。明治から昭和にかけて、八幡製鉄所の工員や近隣の炭鉱労働者たちは過酷な肉体労働に従事していた。24時間体制の交代勤務を終えた男たちが、朝一番に開く酒販店へと駆け込み、量り売りの酒を喉に流し込んで喉を潤したのが始まりとされている。
言葉の語源も実に風情がある。四角い木升の角に口を当てて飲む「升酒」の所作から「角で飲む=角打ち」と呼ばれるようになったという説や、店の一角(四角いスペース)を仕切って飲ませたことに由来するという説が存在する。地方の蔵元で杜氏たちが魂を込めて仕込んだ新酒を、いち早く手頃に味わう庶民の知恵とエネルギーが、この文化の根底には脈打っている。