ネット上の検索において最も多くの誤認を生んでいるのが、「シエルの悪魔化」をめぐる解釈です。結論から述べると、シエルが悪魔化する展開は2010年に放送されたTVアニメ第2期(『黒執事II』)の完全オリジナル結末であり、原作漫画の正史ではありません。
アニメ第2期では、アロイス・トランシーの契約悪魔クロードの策謀やハンナの契約履行により、シエルは「悪魔として転生」しました。その結果、セバスチャンは「悪魔となったシエルの魂を喰らうことができず、永遠に忠実な執事として仕え続ける」という、一種の皮肉なバッドエンド(あるいは永遠の従属)を迎えました。
一方、枢やな氏が描く原作漫画において、坊ちゃんは完全な「人間のまま」です。セバスチャンと交わした契約の条件は極めてシンプルかつ冷酷です。
- 第1条:決して嘘をつかないこと
- 第2条:主人の命令には絶対に従うこと
- 第3条:復讐が完了するその瞬間まで、主人の盾となり裏切らず守り抜くこと
そして契約の対価は「復讐を果たした暁に、セバスチャンが坊ちゃんの魂を喰らい尽くすこと」。原作におけるセバスチャンは、あくまで極上のディナーを完璧に熟成させるために仕えている捕食者であり、両者の間にあるのは甘い絆ではなく、張り詰めた緊張感と利害の一致に過ぎません。