日本全国のうどん処を取材するなかで見えてくるのは、各麺が現地で担っている「食の役割」の明確な違いです。
香川県の讃岐うどんが1杯数百円の日常食として地域インフラ化しているのに対し、群馬県伊香保温泉近くの「水沢うどん街道」に立ち並ぶ店舗では、13軒前後の老舗が格式ある座敷や大広間を構え、観光と参詣が一体化したハレの日の御膳として提供されています。価格帯も天ぷら付きで1,500円〜2,000円前後が標準であり、日常食というよりは「旅の目的地」としての体験価値に重きが置かれています。
一方、長崎の五島うどんは長年島外不出とされてきましたが、近年の製麺技術の均一化とEC流通の発展により、全国の居酒屋やうどん専門店で「地獄炊き」を看板メニューとする店舗が急増しました。SNS上でも「細麺なのに最後まで伸びないコシに驚いた」「あご出汁と椿油の風味が唯一無二」といったリアルな実食レビューが多く寄せられており、熱狂的なリピーターを獲得しています。
富山の氷見うどんに関しても、伝統的な「高岡屋本舗」や「海津屋」の職人技による生産量の限界から希少性が保たれており、百貨店の物産展や高級料亭での引き合いが絶えません。「手延べなのに讃岐以上の噛みごたえがある」という独特のグルテン構造が生み出す食感は、玄人好みの逸品として高く支持されています。