戦前の日本映画界において、若手美男子スターとして熱烈な支持を集めた天津七三郎のプロフィールは、まさに日本劇映画の草創期から隆盛期と重なります。大正期に生を受け、早くから芸能の世界に志を抱いた彼は、端正な容姿と芯の通った発声、そして基礎に裏打ちされた殺陣の技術を武器に映画界へ飛び込みました。
キャリアの初期において彼が所属したのが、当時日活や松竹と並び一大勢力を誇っていた新興キネマです。新興キネマ京都撮影所で製作された数々の時代劇映画において、天津七三郎は若き剣士や貴公子役を好演。映画館に通い詰める観客を魅了し、一躍スターダムへと駆け上がりました。戦前特有のスピード感あふれるチャンバラ映画において、彼の切れ味鋭い身のこなしは群を抜いており、映画雑誌のグラビアや特集記事を飾る常連となっていきます。