ネット上の情報や動画サイトでは、「キッチン用漂白剤を薄めて塗れば茶色いシミが一瞬で消える」といった裏ワザが紹介されるケースが散見されます。しかし、紙の専門家や図書館のアーキビストの視点から言えば、この方法は「最も避けるべき危険行為」です。
塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)や酸素系漂白剤は、色素を酸化・分解する強力な作用を持ちますが、同時に紙の主成分であるセルロース繊維を急速に脆化(ぜいか)させます。薬品を塗った直後は白くなったように見えても、数週間から数ヶ月が経過すると紙がパリパリに硬化して崩れ落ちたり、繊維が波打って二度と平らに戻らなくなります。
さらに、残留した化学成分が空気中の水分と反応し、元のシミよりもはるかに広範囲に及ぶ「不可逆的な濃い黄ばみ」を引き起こす原因にもなります。古書修復の現場でも、漂白処理は精密な中和・脱酸素設備を備えた専門ラボでしか行われません。素人判断による漂白剤の使用は、本を完全に破壊する行為に等しいと心得ておくべきです。