作家・芥見下々氏が構築したプロットの凄みは、「神道的な祓い(死者蘇生)」と「仏教的な循環(法輪・カルマ)」を魔虚羅という一個の造形の中に完璧に融合させた点にあります。
十種神宝の八握剣は「死者を蘇生させる(=死を無効化する)」ための触媒でした。作中の魔虚羅が持つ「あらゆる事象に適応する」という能力は、まさに「死に至る要因(あらゆる攻撃)を学習し、完全に無効化して生き残り続ける」という蘇生儀礼の概念的アップデートです。物理的な蘇生ではなく、「環境への絶対適応による不死性の獲得」という形で神話の能力を再解釈しています。
さらに物語論として見ると、伏黒恵というキャラクターの精神構造と強烈な対比を成しています。伏黒は序盤から自己評価が低く、「自らの命を投げ出してでも強敵を道連れにする」という自己犠牲的な自爆スイッチとして魔虚羅を抱え込んでいました。生命を尊び再生を願う神宝の剣を、術師本人が「死の引き金」としてしか扱えなかったという皮肉は、呪術師という人種が背負う業の深さを象徴しています。