ネット上やメディアで時折話題になるのが「聖徳太子は実在しなかった」「教科書から名前が消えた」という言説です。この情報の真偽はどうなのでしょうか。
「実在しない説」の発端と学術的背景
この議論の火付け役となったのは、1990年代以降の歴史学者による文献批判です。『日本書紀』に記された「10人の話を同時に聞き分けた」「予言ができた」といった超人的エピソードは、奈良時代以降に太子信仰が高まる中で脚色された伝説であると指摘されました。
後世に美化された「完璧な超人像」を史実から削ぎ落として検証する過程で、「聖徳太子というカリスマ像は作られたフィクションではないか」という議論が一般に過激な形で広まったのが実態です。
教科書の「厩戸王(聖徳太子)」表記の理由
文部科学省の学習指導要領や教科書検定における議論を経て、現在の歴史教科書では「厩戸王(聖徳太子)」または「聖徳太子(厩戸王)」という併記が標準的になっています。
生前の本名である「厩戸皇子(王)」を歴史的事実として教えつつ、長く親しまれ文化史的にも重要な尊称である「聖徳太子」を括弧書きで残す方針が取られています。つまり、存在自体が否定されたわけではなく、史実と後世の信仰を正確に区別して教えるようになったというのが真相です。