「元気があれば何でもできる」——テレビのバラエティ番組や街中の演説で幾度となく耳にしたこのフレーズ。パロディ化され、軽快な掛け声として世間に定着したこの言葉だが、その真意は決して能天気なポジティブ思考の押し売りではない。
当時のセコンドや関係者が明かす未公開の舞台裏エピソードがある。過酷な海外遠征や激務で身体がボロボロになり、精神的にも追い詰められていた病床の夜、猪木は身内にポツリと漏らしたという。「元気っていうのはな、湧き出てくるもんじゃねえ。自分で力ずくで引きずり出すもんだ」と。世間がイメージする天真爛漫な「元気」とは異なり、彼にとっての元気とは、自らの弱さと戦い、這い上がるための必死の決意表明だったのだ。
晩年、難病と戦う姿を隠さず晒し続けたのも、まさにこの哲学の実践だった。満身創痍の体でありながらカメラに向かって叫んだあの声は、弱りゆく肉体に対する自分自身の叱咤であり、苦境に喘ぐ世人への遺言でもあった。単なるスローガンを超えた熱量こそが、今なお我々の心を揺さぶる人生訓として燦然と輝いている。