破天荒な発想と圧倒的な存在感で熱狂を生み出した十八代目 中村勘三郎。彼を最も近くで見守り、その熱量と葛藤を誰よりも深く受け止めたのが妻の波野好江氏だ。舞台上で爆発的な表現を繰り出す夫の裏で、彼女は女将として一門の切り盛りや贔屓筋への対応、さらには夫の奔放な行動への配慮に心を砕いてきた。
華やかな歌舞伎界の裏側には、常に目に見えない重圧が存在する。劇的な幕引きとなった夫の早世という深い哀しみの中にありながらも、彼女は一度も取り乱す姿を見せなかった。その毅然とした立ち振る舞いの裏にあった葛藤と、家族と劇団を断固として守り抜く強さこそが、今も語り継がれる名女将の真実だ。