三山ひろしとネットカルチャーの結びつきを語る上で外せないのが、NHK紅白歌合戦における「けん玉世界記録への道」です。100人を超える腕自慢たちが途切れなく玉を皿に乗せ続け、最後に歌唱中の三山ひろし本人が大技を決めてギネス世界記録を樹立するというこのプロジェクトは、演歌ファンのみならず、普段テレビを能動的に観ない若い世代までもXの前に釘付けにしてきました。
社会心理学の観点からこの現象を紐解くと、視聴者の心理には「共感性緊張(Empathetic Tension)」が強く働いています。他者が重大なプレッシャーに晒されている姿をリアルタイムで目撃するとき、人間はあたかも自分がその場に立っているかのような心拍数の上昇や手汗を体験します。過去の特番インタビューで三山ひろし本人が「歌の出だしを迎える瞬間、プレッシャーで胃がせり上がるような感覚になるが、失敗できない仲間たちの思いを背負って皿に乗せる」と述懐した通り、その重圧は極限状態です。
視聴者はその張り詰めた空気に耐えかね、「頼む、落とさないでくれ」「心臓がもたない」と叫ぶようにポストします。万が一のミスが発生した際の「審議入り」の騒動から、リベンジ成功による歓喜の爆発まで、感情のジェットコースターが可視化されるプラットフォームとしてXが機能しているのです。単なる歌唱披露を超え、視聴者参加型のアスレチック・エンターテインメントへと昇華させた点に、彼独自の発信力の強さがあります。