日本の食文化において、蟹と酢の関係性は極めて深い。美食家として知られた北大路魯山人も、かつて蟹の味わいにおける酢の加減について独自の美学を語っていた。酢は酸っぱさを足すためのものではなく、食材の持つ「泥くささ」や「くどさ」を削ぎ落とし、純粋な旨味だけを浮き彫りにするための仕掛けなのだ。
人気料理漫画『美味しんぼ』の劇中でも、本物の職人が作る三杯酢や土佐酢の奥深さがたびたび描写されてきた。公益社団法人日本料理研究会などの専門機関も、伝統的な和食技法における酢の役割を現代に伝える活動を続けている。素材の個性を生かす日本の知恵が、一杯のカニ酢に凝縮されていると言っても過言ではない。