せんべいを持つ観光客に向かって、鹿がトントンとリズミカルに頭を下げる姿は「お辞儀をして礼儀正しい」と国内外で大人気です。しかし、動物行動学の視点から検証すると、この解釈は人間の勝手な擬人化に過ぎないことが分かっています。
研究者や愛護会の見解によれば、鹿のこの上下運動は敬意や感謝ではなく、「早くせんべいを寄越せ!」という威嚇や焦燥、フラストレーションの表現です。頭を低く下げる動作は、本来鹿同士のケンカで角を突き出す直前の示威行動(プレ・アタック)に近く、お辞儀をさせて喜んでいる状態は、鹿からすればイライラが頂点に達している危険なサインでもあります。
そのため、お辞儀を何度もさせようとせんべいを高く掲げてじらしたり、写真を撮るために焦らしたりすると、鹿は痺れを切らして服を引っ張る、お尻を突く、手を噛むといった攻撃行動に移ります。特に以下のマナーとコツを徹底することが、トラブルを防ぐ絶対条件です。
【安全に鹿せんべいを与える3大原則】
1. 出し惜しみせず、速やかに差し出す:購入したらその場で帯をほどき、鹿が近づいてきたら待たせずに1枚ずつ水平に差し出します。
2. じらさない・見せびらかさない:せんべいを頭上に掲げて鹿を立たせたり、焦らす行為は攻撃を誘発するため厳禁です。
3. なくなったら「両手を開いて見せる」:すべてのせんべいが終わったら、空っぽの手のひらを鹿の目の前に広げて見せます。鹿はこの「ノーモア(もう何もない)」のボディランゲージを熟知しているため、すんなりと諦めて去っていきます。