『冷たい熱帯魚』での怪演は、映画賞の勢力図をも塗り替えた。第35回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞をはじめ、ブルーリボン賞やキネマ旬報ベスト・テンなど、国内の名だたる助演男優賞を総なめにする快挙を成し遂げた。一介の脇役にとどまらない、主役を食い尽くすほどの怪演が名実ともに頂点を極めた瞬間だった。
だが、栄冠を手にした後も彼のスタンスにブレは一切ない。主役を引き立てる職人としての矜持を保ちつつ、ワンカットで作品のトーンを決定づける重厚さを提供し続ける。主演を張ることだけが名優の証ではない。画面の隅に映るだけで物語の深みを何倍にも膨らませる力こそが、この名バイプレイヤーの真価である。