ネット上で「グーグルアースの写ってはいけないもの」として数百万回以上再生される動画やまとめ記事には、決まってショッキングな見出しがつけられます。しかし、現地の報道記録や地理学的調査を紐解くと、極めて日常的な真実が浮かび上がってきます。
もっとも有名な事例が、前述のオランダ・アルメレ湖畔の桟橋です。赤黒い染みと何者かが引きずられたような軌跡は、一時期「衛星が偶然捉えた未解決殺人事件の決定的瞬間」と世界中で騒がれました。ところが、現地警察やメディアの調査により、犬の飼い主が名乗り出たことで事態は一変します。湖に飛び込んで遊んでいた愛犬のラブラドールレトリバーが桟橋に駆け上がり、濡れた木板が濃い赤褐色に変色しただけだったのです。上空数万メートルから撮影された低解像度の衛星写真が、木材の水分を血痕に見せかけた典型例といえます。
また、海や湖に現れる「謎の巨大生物」の座標も、大半は航行する大型船舶が残した航跡波(ウェイク)や、海面の海藻の群生、あるいは浅瀬の砂地が潮流によって変形したパターンです。ペルーの砂漠やスーダンの荒野で見つかる不気味な人面や唇のような地形も、数千年にわたる風化と侵食が偶然作り出した自然の造形(風食地形)に過ぎません。