ファミリーコンピュータ版の『ドラクエ3』が登場した1988年当時、ゲームデザイナーの堀井雄二氏が設計したゲームバランスには、「強大なメリットの裏には必ず同等のリスクが存在する」という等価交換の哲学が色濃く反映されていました。
本作における守備力の内部データ上限は「255」です。当時のRPGにおいて、兜ひとつの装備でシステム上の最大値に到達するという設定は極めて異例でした。一般的な最強クラスの兜である「グレートヘルム」でさえ守備力45であることを踏まえると、守備力255という数値がいかに常軌を逸したパラメータであるかが分かります。
制作陣が意図したのは、「一撃のダメージすら通さない鋼鉄の肉体を手に入れる代わりに、理性を完全に失う」という究極の狂気です。ジャパニーズホラーを想起させる「般若」の意匠とともに、ゲームシステムと世界観が見事に融合した、ドラクエシリーズ屈指の狂気的なアイテムとしてプレイヤーの記憶に刻まれることになりました。