なぜ日本では「食べ放題」のことをバイキングと呼ぶようになったのでしょうか。その歴史は、1958年(昭和33年)に帝国ホテルで誕生した日本初の食べ放題レストランに遡ります。
当時、帝国ホテルの第11代総支配人であった犬丸徹三氏がヨーロッパを視察した際、デンマークをはじめとする北欧の伝統料理「スモーガスボード(Smörgåsbord)」に出会いました。スモーガスボードとは、テーブルに並んだ多種多様な肉・魚・前菜などの料理を、客が自分の好みに合わせて自由に選んで食べる伝統的な饗宴スタイルです。この豪快で自由な食事スタイルに感銘を受けた犬丸氏は、日本への導入を決意しました。
しかし、「スモーガスボード」という名称は当時の日本人にとって発音しにくく、親しみにくいという課題がありました。そこで新しい店名を社内公募したところ、当時帝国ホテルの隣にあった映画館「日比谷映画劇場」で大ヒット上映中だったハリウッド映画『バイキング』(1958年公開、カーク・ダグラス主演)に着想を得た案が採用されました。北欧の海賊バイキングの豪快でエネルギッシュなイメージが、好きなものを心ゆくまで味わう食事スタイルに合致したことから、「インペリアルバイキング」と名付けられてオープンしました。
このレストランが爆発的な人気を博したことで、全国各地のホテルや飲食店に同様の食べ放題スタイルが波及し、日本では「バイキング=食べ放題」という言葉が定着しました。