役者の中には「自分をどう見せるか」を第一に考えるタイプもいる。しかし、彼の演技アプローチは明確に「作品全体をどう成立させるか」という大局観に基づいている。
主演俳優が感情を爆発させるシーンでは、あえて感情を殺した静かなリアクションに徹する。そうすることで、主演の演技が何倍にも引き立ち、場面全体の緊張感が際立つのだ。いわば「引き算の美学」である。
自分を主張しすぎないことによって、結果として誰よりも強い印象を残す。このパラドックスを成り立たせることができる役者は、日本映画・ドラマ界においても極めて限られている。