心筋梗塞そのものが直接の死をもたらすプロセスには、致死的不整脈の発生が深く関わっています。冠動脈の血流が途絶えると、激しい胸痛とともに心筋が酸素欠乏に陥り、心室が無秩序に痙攣する松田直樹の心室細動が引き起こされました。
心室細動が発生すると、心臓は血液を全身に送り出すポンプとしての機能を完全に喪失します。脳への血流は数秒で停止し、即座に失神。発症から1分ごとに救命率は約7〜10%低下し、除細動(電気ショック)が行われないまま5分が経過すれば救命率は半減、10分を過ぎると脳死または社会死に至る確率が極めて高くなります。
医療統計において、運動愛好家やアスリートが命を落とすスポーツ心臓突然死の原因は、若年層では肥大型心筋症や先天性冠動脈異常、35歳以上では動脈硬化を基盤とする冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)が多数を占めます。松田さんの場合、34歳という年齢的境界線にあり、外見上は完璧なコンディションを維持していたプロフェッショナルであっても、無症状のまま血管内部の病変が進行していた事実を示しています。