世間が最も抱く疑問は、「なぜそこまで早く起きる必要があるのか」という点に尽きます。その答えは、彼が起床直後から仕事現場へ向かうまでにこなす、およそ6〜7時間に及ぶ朝のルーティンに隠されています。
片岡鶴太郎の朝は、精神と肉体を極限まで研ぎ澄ます儀式のような工程で埋め尽くされています。その中核を成すのが、2017年にインド政府公認プロフェッショナルヨガマスター(最高師範)の認定を受けた本格的なヨガの実践です。
起床直後に行われるのは、鼻腔を塩水で洗浄する「ジャラ・ネーティ」などの伝統的な浄化法です。続いて、内臓を活性化させるための呼吸法(プラーナヤーマ)へと移行します。特筆すべきは、バラエティ番組の密着映像でも大きな反響を呼んだナウリ(腹直筋を波打たせる腸もみ・内臓浄化法)です。腹部を極限まで凹ませ、腹直筋だけを左右にうねらせるこの高度な技法により、就寝中に滞った内臓の血流を一気に促進させます。
その後、難度の高いアーサナ(ポーズ)の数々を淀みなく行い、瞑想へと入ります。本人が「どんなに急いでもヨガだけで4時間から5時間はかかる」と語る通り、妥協のないメニューを毎日寸分狂わず完遂します。舞台『ブラック・コーヒー』などの過密な公演期間中であっても、膨大なセリフを頭に叩き込みながらこのヨガの時間を削ることは決してありません。
さらにヨガの終了後には、もう一つの大仕事である「食事」が待っています。彼が実践しているのは基本的に1日1食のスタイルであり、その唯一の食事がこの朝食です。用意される朝食の内容は、色鮮やかな季節の果物数種類、野菜、豆類、乾物、ナッツ類などを丁寧に盛り付けた大皿料理。これらを一切の急ぎ足なしに、1口あたり数十回から百回以上、極めて細かく噛み締めながら約2時間かけて胃へと納めていきます。
「ヨガに約4〜5時間」「朝食と片付けに約2時間」「身支度・発声に約1時間」。これらを足し合わせると、最低でも7時間が必要です。仮に朝7時に自宅を出発しなければならない撮影や稽古があれば、逆算して深夜0時、あるいは夜11時に起きなければ間に合わない計算になります。奇行のように見える起床時間は、彼が自らに課した修行のようなメニューをすべてやり遂げるための、極めて論理的で厳密な「逆算の産物」なのです。