ヒロインであるポニョの造形もまた、単なる可愛い「金魚」の枠にとどまらない。その本名は「ブリュンヒルド」。北欧神話において戦死した勇者の魂を回収し、死後の館ヴァルハラへと導く戦乙女(ワルキューレ)の名と同じである。この命名自体が、彼女が死への案内人であることを示唆していると読み解く向きは多い。
人間になりたいと願うポニョが力を暴走させた際、海にはデボン紀の古代魚であるデノニクスやボトリオレピスが蘇る。生命が陸上に進出する以前の、混沌とした原初の海。ポニョの足が鳥の足のように変化し、やがて人間の少女の姿を得るプロセスは、地球における生命の進化史そのものの圧縮描写だ。魔法というファンタジーの衣を纏いつつ、生命が持つ根源的なエネルギーと狂気をポニョという存在へ集約させている。