「鶏もも肉の西京漬け」は脂の甘みと味噌のコクが調和した濃厚な味わいが魅力ですが、近年はコストパフォーマンスとヘルシー志向から「鶏むね肉」を使った西京焼きの需要も高まっています。しかし、むね肉は加熱によって水分が抜けやすく、パサパサになりやすいのが構造上の難点です。
鶏むね肉を専門店レベルの極上な柔らかさに仕上げるには、仕込み段階で2つのひと手間を加えることが必須です。まず、肉の繊維方向に対して垂直に包丁を入れ、厚みを均一に開いた後、フォークで全体に数十箇所の穴を開けます。これにより味噌床の浸透速度が格段に早まります。
さらに決定的な裏技が、味噌床に漬ける前の「保水コーティング」です。肉1枚に対して砂糖小さじ1/2と酒大さじ1を揉み込んで5分置き、筋繊維の間に水分を抱え込ませてから白味噌の調味料を合わせます。味噌の酵素(プロテアーゼ)がタンパク質を分解してアミノ酸へと変化させる作用と相まって、驚くほどしっとりとした柔らかな食感へ劇的に進化します。