日本外傷学会を中心に、全国の救命救急センターで共有され始めているのが、熊外傷特有のクリニカルパスと診療指針の標準化だ。かつては各医師の経験則に頼らざるを得なかった治療方針が、症例データベースの集約によって科学的プロトコルへと昇華しつつある。
特に重症顔面外傷においては、形成外科、耳鼻咽喉科、脳神経外科、歯科口腔外科が外傷外科医の統括のもとで即座に合同チームを組む「ハイブリッド初期診療」が確立されつつある。気道狭窄のリスクに対しては躊躇なく外科的気道確保(緊急気管切開)を選択し、その後に高解像度CTを用いた血管塞栓術(IVR)で深部出血を止める。この迅速なフローが、かつては救えなかった重症者の社会復帰率を飛躍的に高めている。
救急医療の最前線では、プレホスピタル(病院前)とインホスピタル(院内)のシームレスな接続が合言葉だ。救急救命士による現場での止血帯処置や骨盤骨折に対するバインダー装着の徹底が、病院到着時の生存率を確実に押し上げている。