物語の推進力となったのが、槙島聖護と狡噛慎也の執着に満ちた関係性です。二人は警察と犯罪者という対立軸にありながら、作中で「誰よりも深く精神を交錯させた唯一無二の理解者」として描かれます。
槙島は他者を自分の駒としてしか見ていませんでしたが、狡噛だけは自らの思考を先回りし、同じ古典を読み解き、自らの孤独を理解し得る存在として特別視していました。常守朱がシステムと法の枠組みの中で槙島を生捕りにしようとしたのに対し、狡噛は監視官の身分を捨て、一人の生身の人間として槙島を殺す道を選びます。
槙島にとって、シビュラの道具として裁かれることは最大の屈辱でした。だからこそ、システムを捨てて己の意志で追ってきた狡噛に命を奪われる結末は、彼にとってある種の救済であり、望んでいた幕引きでもあったのです。