本作のキャスティングや制作を巡っては、インターネット上でいくつかの誤解や憶測が飛び交いました。代表的な3つの疑問について、公式発表や制作陣のインタビュー資料をもとに真相を整理します。
第一に、「福士蒼汰がシーズン1(有功役)とシーズン2(胤篤役)で一人二役を務めたのはファンサービスではないか」という見方です。これは明確な誤りです。原作漫画においても、天璋院・胤篤は若き日の万里小路有功に瓜二つであるという設定が重要な意味を持っています。大奥の始まりの象徴であった有功の面影を持つ胤篤が、大奥の終焉を見届ける役目を果たす構造は、物語の円環を閉じるための必須の劇的装置でした。福士の再登板は、原作者の構築したテーマ性を完遂するための必然的な采配だったのです。
第二に、「過去の映画版・民放ドラマ版との比較における優劣論」です。過去の二宮和也・柴咲コウ版や堺雅人・菅野美穂版の映画も高い評価を得ていましたが、それらは原作の特定の編を切り取った独立作でした。対して今回のNHK版は、吉宗の治世から幕末の無血開城・大奥解体に至る全19巻を完全映像化した史上初のプロジェクトです。比較すべきはキャスト個人の優劣ではなく、通史として描くことで初めて浮き彫りになった「時代の連続性と人々の祈り」というスケール感にあります。
第三に、「再放送や配信で見られないのではないか」という懸念です。NHKのドラマ10作品は権利関係が複雑になりがちですが、本作は放送後も「NHKオンデマンド」および提携配信プラットフォーム(U-NEXT等)で全話配信が維持されており、定期的な総集編の地上波再放送も行われています。名作としてのアーカイブ体制は極めて強固に整備されています。