このシーンが漫画史に残る傑作シーンと評される理由は、単なるドンデン返しにとどまらず、物語初期から張り巡らされた膨大な謎が一気に一本の線で繋がるからです。
鍵を握るのは、九つの巨人のうちエレンが宿す「進撃の巨人」固有の能力です。他の巨人が過去の継承者の記憶を継承するのに対し、進撃の巨人は「未来の継承者の記憶を覗き見ることができる」という特異な性質を持っています。そして、グリシャが視ていた「未来」とは、未来のエレンが選択的に父へ見せていた記憶でした。
ジークはエレンを救おうとして過去の記憶を巡った結果、皮肉にも「エレンが父を脅迫して始祖を奪わせる現場」を自らお膳立てしてしまいました。過去を変えたのではなく、過去に起きた虐殺そのものが「未来のエレンの介入」によって成立していたという閉じた時間跳躍(決定論的タイムトラベル)の構図は、極めて緻密に設計されています。