持統天皇がこの歌で本当に伝えたかった意図は、単なる自然美の鑑賞だけではありません。背景には、彼女が推進した律令国家の樹立と藤原京への遷都という国家的大事業が存在します。
歌の舞台である「天の香具山」は、大和三山(香具山・畝傍山・耳成山)の中でも天から降ってきた山として神格化されていた特別な霊峰です。藤原京の東南に位置し、国の安寧を祈る祭祀の場でもありました。
初夏の青葉が生い茂る緑深い香具山の山肌に、民や神事に従事する者たちの真っ白な衣が整然と干されている光景。それは、戦乱の時代(壬申の乱)を乗り越え、法と秩序が行き届いた平和で豊かな国家が完成しつつあることの象徴でした。持統天皇は、初夏の訪れを寿ぐと同時に、自らが築き上げた清新な国家の繁栄を誇り高く宣言したのです。