ナスターシャ・キンスキーが映画界に彗星のごとく現れたのは1970年代半ばのことでした。ヴィム・ヴェンダース監督の『まわり道』(1975年)で鮮烈な銀幕デビューを果たした彼女は、息をのむような若い頃の美貌とミステリアスな空気感で瞬く間に世界中の映画作家たちを魅了していきます。
彼女の名を決定づけたのが、トマス・ハーディの古典文学を映画化したロマン・ポランスキー監督作『テス』(1979年)です。過酷な運命に翻弄されながらも気高く生きる農村の少女テスを圧倒的な説得力で演じ切り、ゴールデングローブ賞新人女優賞を受賞。一躍、国際的トップスターへと駆け上がりました。
その後も、野生的なエロティシズムを開花させたポール・シュレイダー監督の『キャット・ピープル』(1982年)、フランシス・フォード・コッポラ監督の野心作『ワン・フロム・ザ・ハート』(1982年)、そしてカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞した『パリ、テキサス』(1984年)と、映画史に残る傑作へ立て続けに出演。ピンクのモヘアセーターを纏った『パリ、テキサス』のジェーン役は、今なお映画ポスターやファッションアイコンの象徴として引用され続けています。