昭和の冷蔵庫を語るうえで、避けて通れない思い出が「霜取り作業」です。昭和40年代までの主流だった1ドア冷蔵庫を使った経験がある世代からは、「月に一度は冷凍室の霜と格闘した」「アイスピックで氷を削った」というエピソードが必ずと言っていいほど聞かれます。
なぜ昔の冷蔵庫にはあれほど分厚い霜が付着したのでしょうか。その技術的理由は、当時の冷却方式である「直冷式(自然対流式)」にあります。
直冷式とは、冷蔵庫の内部(上部の製氷スペース周辺)に冷却パイプを直接張り巡らせ、冷気を自然に循環させる方式です。扉を開閉するたびに室内の湿った空気が庫内へ入り込み、マイナス十数度に冷やされた冷却板に触れると、空気中の水分が瞬時に結露して凍結します。これを繰り返すうちに氷の層が雪だるま式に成長し、放置すると冷凍室の扉が閉まらなくなるほど巨大な「氷の塊」へと発達してしまいました。
霜が厚くなると氷が断熱材の役割を果たしてしまい、冷却効率が極端に低下します。その結果、コンプレッサーが常にフル稼働することになり、電気代が跳ね上がるだけでなくモーターの故障原因にもなっていました。そのため、当時の主婦は定期的に食品をすべて取り出し、電源プラグを抜いて扉を開け放ち、湯を張った洗面器を置いて氷を溶かしたり、付属のプラスチック製ヘラで霜を削り落としたりしていたのです。
1970年代以降、庫外のエバポレーター(冷却器)で冷気を作りファンで送り込む「間接冷却式(ファン式)」とヒーターによる自動霜取り機能が実用化されたことで、この過酷な家事労働はようやく姿を消すことになりました。