ラムネの象徴である「ビー玉」ですが、そもそもなぜ飲料の瓶の中にガラス玉を入れる必要があったのでしょうか。そこには、19世紀の技術的制約を打破した画期的な物理トリックがありました。
1872年、イギリスの発明家ハイラム・コッド(Hiram Codd)が特許を取得したこの容器は、王冠やスクリューキャップが普及していなかった時代に誕生しました。当時はコルク栓で炭酸を密閉していましたが、コルクが乾燥するとガスが抜け、逆に濡れすぎると腐食するという致命的な欠点があったのです。コッドは、「炭酸飲料自身が発する内圧を利用して、中からガラス玉をゴムパッキンに押し当てて密閉する」という逆転の発想で世界的な特許瓶を作り上げました。
現在でも下町の製造現場などでは、職人たちが1本ずつ瓶の洗浄、シロップ注入、炭酸水充填、そして瓶を逆さにして内圧でビー玉を密着させる工程を行っています。瓶の内圧はおよそ0.25〜0.3メガパスカル(MPa)に達し、開栓するまでは人間の力で外から指で押してもびくともしない強度を保ちます。
しかし、祭りの屋台や観光地でラムネを購入した際、勢いよく開けて中身を派手に吹きこぼしてしまった経験を持つ人は少なくありません。現代のラムネ瓶を完璧に開けるためのプロの作法をご紹介します。
【昔ながらのラムネ瓶の正しい開け方手順】
- 瓶を十分に冷やす:温度が高いと炭酸ガスが気化しやすく、吹きこぼれの原因になります。10℃以下に冷やすのが鉄則です。
- 平らな場所に置く:手で宙に浮かせたまま押し込もうとすると力が分散し、滑って危険です。
- 玉押し(プラスチックキャップ)を垂直に当てる:斜めに力を加えると玉がズレてガスが一気に噴出します。
- 手のひらの付け根で一気に押し込み、5〜6秒キープする:ここが最大のポイントです。玉が落ちた瞬間に手を離さず、押し棒で蓋をしたまま炭酸ガスの大きな泡が落ち着くまで静かに待ちます。
- 飲むときは「くぼみ」を下にする:瓶の首元にある2つのくぼみを下(手前)に向けて傾けることで、転がってきたビー玉がくぼみに引っ掛かり、飲み口を塞がずにスムーズに飲めます。
なお、「ビー玉」という呼び名の語源については、傷のない一級品を「A玉」、規格外の不良品をおもちゃ用にしたものを「B玉」と呼んだという俗説が有名ですが、実際にはガラス玉を意味する「ビードロ玉」が短縮されたという説が言語学的には有力とされています。