数ある戦死の中でも、物語の根幹を揺るがし読者の感情を激しく揺さぶった4つの退場劇には、個々の登場人物が選んだ明確な信念と必然性が刻まれています。
エレン・イェーガー:自らの死をもって「巨人の力」を消滅させた真意
エレンの死は、敵による敗北ではなく彼自身が綿密に手繰り寄せた結末でした。エレンが全人類の8割を奪う「地鳴らし」を強行した背景には、パラディ島の生存権確保に加え、仲間たちを「虐殺者を討ち取った英雄」に仕立て上げる狙いがありました。
さらに最も重大な理由は、始祖ユミルの解放です。2000年間初代フリッツ王への愛と執着に縛られていたユミルは、愛するエレンを自らの手で討つ決断を下したミカサの姿を見て、ようやく呪縛から解放されました。エレンは自らの命を差し出すことで、巨人の力そのものを世界から完全消滅させたのです。
サシャ・ブラウス:第67話の銃弾が突きつけた「森から出られない世界」の残酷さ
アニメ第67話(原作第105話)で描かれたサシャの死は、作中で最も理不尽かつ唐突な悲劇として語り継がれています。マーレのレベリオ収容区への強襲作戦が成功し、帰還する飛行船内でお祭り騒ぎとなっていた矢先、乗り込んできた少女ガビ・ブラウンの放った一発の銃弾がサシャの命を奪いました。
サシャが最期に残した言葉は「肉」。彼女の死は単なるショック描写にとどまらず、エレンたちがマーレにばらまいた憎悪の連鎖がそのまま仲間へ跳ね返ってきた現実を象徴しています。後に父ブラウスが語る「子供たちを森から出してやらねばならねえ」という思想へ繋がる、作品の道徳的転換点となりました。
ハンジ・ゾエ:第14代団長として後を託し、超大型巨人に挑んだ覚悟
完結編(前編)におけるハンジの最期は、調査兵団の誇りを象徴する壮烈な散り際でした。地鳴らしを止めるための飛行艇整備中、超大型巨人の群れが港に迫り、離陸が絶望的となった局面で、ハンジは単身で足止め役を引き受けます。
次期団長にアルミンを指名し、リヴァイから「心臓を捧げよ」と見送られたハンジは、雷槍と立体機動を駆使して数体の巨人を撃破。超大型巨人が発する凄まじい超高熱に全身を包まれながらも戦い続け、飛行艇が無事に空へ飛び立つのを見届けて力尽きました。
エルヴィン・スミス:夢を捨てて地獄へ突撃した「白夜」の選択
シガンシナ区奪還作戦において、ジーク(獣の巨人)の投石により全滅寸前に追い込まれた調査兵団。エルヴィンは長年の悲願であった「地下室の真相を知る」という個人的な夢を諦め、新兵たちを率いて自ら囮となる決死の突撃を敢行しました。
腹部を抉られ瀕死となったエルヴィンと、同じく超大型巨人の熱気で炭化したアルミンのどちらに巨人化注射を使うかを巡り、リヴァイとエレンらは激しく対立(通称「白夜」)。最終的にリヴァイは、エルヴィンをこれ以上の地獄から解放して安らかに眠らせる道を選び、注射はアルミンへと投与されました。