ファンに惜しまれながら実施されたディズニー年間パスポート払戻し経緯から今日に至るまで、なぜこれほど強固に廃止状態が維持されているのか。その背景には、東京ディズニーリゾートが抱えていた長年の構造的課題である東京ディズニーリゾート混雑緩和と、経営指標の要であるディズニー客単価向上戦略の存在があります。
かつての年パス保有者(通称「年パス民」)の行動様式を振り返ると、年間数十回から数百回パークに足を運ぶヘビーユーザーの多くは、ショーやパレードの鑑賞、特定のキャラクターグリーティングが主目的でした。彼らはパーク内のレストランで高額な食事を取ったり、大量のグッズを購入したりする頻度が1回あたりで見ると一般ゲストに比べて著しく低い傾向にありました。一方で、人気アトラクションの待機列やパレードルートの最前列を長時間占有することが日常化し、年に一度遠方から訪れる一般ファミリー層の満足度を押し下げる要因になっていたという現場データが存在します。
オリエンタルランドにとって、限られた収容キャパシティの中で売上を最大化するには、「年に1回来園してチケット代・飲食代・グッズ代・ディズニー・プレミアアクセス(DPA)に惜しみなくお金を使うゲスト」を優先することが合理的です。実際に、年パスを停止してワンデーチケット中心の変動価格制に移行した結果、ゲスト1人あたりの売上高はコロナ前の約11,000円台から、2024〜2026年期には1人あたり約17,000円〜18,000円台後半へと劇的に伸長しました。経営的に大成功を収めた戦略を捨ててまで、旧制度に戻す動機が現在の運営企業には存在しないのです。