喃語はいつから始まるかという問いに対して、小児発達の標準的な指標では生後5ヶ月から6ヶ月の発達段階が一つの目安とされています。ただし、発声の発達は一本道ではなく、いくつかの明確なフェーズを経て複雑化していきます。
喃語の段階と発声の経緯を整理すると、大きく以下の3つのステップに分類されます。
第1段階:初期喃語(生後5〜6ヶ月頃)
母音に単発の子音が混ざり始めます。「ば」「む」「だ」など、単音節の発声が中心で、自分の口から思いがけず出た音の響きや振動を赤ちゃん自身が面白がって実験している段階です。
第2段階:反復喃語・規準喃語(生後7〜8ヶ月頃)
言語発達において「規準喃語(Canonical babbling)」と呼ばれる極めて重要な時期です。「ばばばば」「まぐまぐ」「だだだ」のように、同じ子音と母音の組み合わせがリズミカルに連続して発声されます。唇を閉じて破裂させる両唇音(/b/, /m/, /p/)や、舌を歯茎に当てる歯茎音(/d/, /t/)が頻繁に使われるようになります。この規則的な反復運動は、手足をバタバタさせる運動発達と連動しており、脳の運動野と発声器官の協調運動が順調に進んでいる証拠です。
第3段階:多様喃語・ジャーゴン期(生後9〜10ヶ月以降)
同じ音の繰り返しから、「あぶだ」「ばだま」のように異なる子音や母音が混ざり合う「多様喃語(Variegated babbling)」へと移行します。さらに10ヶ月を過ぎると、まるで大人の言葉を真似て流暢におしゃべりしているかのような、抑揚(イントネーション)のついた「ジャーゴン(Jargon)」が観察されるようになります。世間一般で言われる「ばぶばぶ」という典型的な赤ちゃん言葉は、実は発声器官が高度に発達したこの後半の時期になって初めて明瞭に形作られる音なのです。