なぜここまで待ち時間が長期化するのか、その背景には単なる人気度にとどまらない、店舗の設計思想とオペレーション上の明確な構造的理由が存在します。
第一の理由は、席数がわずか13席前後(テーブル席およびカウンター席)という極めてコンパクトな空間設計です。築年数を重ねた京町家の風情を残す店内は、客席の間隔をゆったりと取り、奥に広がる坪庭をどの席からも愛でられるよう設計されています。席数を増やして回転率を高める一般的な商業カフェとは根本的に目指す方向性が異なります。
第二に、注文が入るごとに一服ずつ茶筅を振って点てる伝統的な提供スタイルです。急須で淹れる玉露や煎茶も湯冷ましを使って適切な温度まで下げてから抽出するため、1組あたりのサーブに相応の時間を要します。この職人気質のオペレーションこそが品質を支える一方で、客席の回転を緩やかにしています。
第三に、訪問者の平均滞在時間が45分〜60分と長い心理的要因が挙げられます。日常の喧騒から隔絶された静寂の空間に入ると、利用者は自然と腰を落ち着け、茶の香りと余韻をじっくり味わいます。居心地の良さが追求されているからこそ、客の回転スピードが上がらないという贅沢なジレンマを抱えているのです。