歩行補助具を選ぶうえで最も警戒すべき落とし穴が、シルバーカーと歩行車の混同です。見た目はどちらも四輪のカートに見えますが、JIS規格上の定義も想定される身体機能も全くの別物です。
シルバーカーは、基本的に「自力で問題なく歩ける高齢者」が荷物を運んだり、疲れたときに腰掛けたりするための生活支援用具です。ハンドルに体重を強くかける設計になっておらず、歩行が不安定な人が頼り切って寄りかかると、車体が前方に走りすぎて後ろへ転倒する重大事故につながりかねません。
対して歩行車は、身体の一部をフレームの内側に入れ、ハンドルや前腕支持台に体重をしっかりと預けながら歩く構造になっています。高い剛性と確実なブレーキ機構を備えており、下肢筋力の低下や麻痺がある方でも安定した重心移動を可能にします。専門職である理学療法士やケアマネジャーが「歩行リハビリや転倒予防」を目的として推奨するのは、間違いなくこちらの歩行車です。
なお、医療現場や施設内で見かける歩行器との違いにも触れておきます。一般的な歩行器は車輪がないか、前輪のみに小さなタイヤが付いた構造で、主に屋内でのリハビリや短距離のすり足移動に用いられます。一方、四輪すべてに走行性能の高い車輪とブレーキを配備し、屋外の長距離歩行や段差走破まで見据えて作られているのが歩行車です。